ビタミンDは脂溶性ビタミンの一つで、免疫機能の維持には不可欠であり、呼吸器疾患の予防にも有効とされます。
またCOVID-19の流行を受けて、ビタミンDのCOVID-19に対する有効性について、関心が高まっています。
直近の研究では、ビタミンDが充足している患者は、COVID-19の重症及び死亡率が低いことが指摘されています。
そこで当記事では、ビタミンDの免疫系への影響や呼吸器疾患への有効性について、詳しく説明したいと思います。
ビタミンDが免疫系に及ぼす影響
ビタミンDは、免疫系が正常に機能し、病気や感染症から肉体を保護することをサポートします。
ビタミンDは免疫応答を促進し、免疫系の調整や炎症の防止に努め、T細胞やマクロファージなど、免疫細胞の機能を強化することで知られています。
またビタミンDが不足すると、病気や感染症、免疫疾患のリスクが増加することが指摘されています。
ビタミンD欠乏症は、結核や喘息、肺疾患や呼吸器感染症のリスクを増大させ、抗体面でも影響を与えることが示唆されています。
まとめ
ビタミンDは免疫機能の維持に必須であり、病気や感染症を予防する上では欠かせない栄養素である。
COVID-19への有効性の是非
現在、COVID-19の治療法は確立されておらず、ビタミンDの有効性を証明する研究もほとんど存在しません。
ただし直近の研究では、25-ヒドロキシビタミンDの血中濃度が30ng/mlに保たれることが、COVID-19の症状緩和に有効である可能性が指摘されるようになりました。
COVID-19患者235人の分析データによると、40代以上の患者で、十分なビタミンDを摂取していた患者は、そうでない患者と比較して、意識混濁や低酸素症、その他死亡につながる疾患の可能性が、51.5%低下していたことが判明しました。
多くの研究では、ビタミンD欠乏症による免疫機能の低下や呼吸器疾患のリスク増加について指摘しています。
また別の研究では、ビタミンDサプリメントの補給による、呼吸器感染症全般の予防効果を指摘しています
14カ国11,321人を対象とした調査の結果、ビタミンDの補給は、急性呼吸器感染症のリスクを低下させるとことが分かりました。
この研究では、ビタミンDサプリメントには少なくとも、急性呼吸器感染症(ARI)の発症リスクを12%減少させることで結論付けられました。またこうした効果は、ビタミンDが不足している人に顕著だったとされます。
また調査の結果、ビタミンDサプリメントは、少量かつ長期に渡って服用することで、より感染症予防の効果が見込めることが分かりました。また高齢者の呼吸器疾患による死亡リスクを低下させることも報告されています。
さらに別の研究では、ビタミンD不足による「サイトカインストーム」の可能性について指摘されています。
サイトカインは免疫系に欠かせないタンパク質の一つであり、炎症を防止し、病気や感染症から肉体を保護することで知られます。
ただし、感染症や他の要因によって、サイトカインが過剰に放出されるケースがあります。こうしたサイトカインストームと呼ばれる過剰分泌は、体内細胞や組織の損傷を引き起こし、病状の進行や悪化を促してしまいます。
実際、サイトカインの過剰分泌は、多臓器不全や急性呼吸窮迫症候群の主要因と言われており、COVID-19の重症度にも関連しているとされます。
調査によると、COVID-19の重症患者には、サイトカイン、とりわけインターロイキン-1、インターロイキン-6が過剰放出されていることが報告されています。
このことから、ビタミンD不足による免疫機能の低下が、サイトカインストームを誘発し、COVID-19のリスクを増大させてしまうと考えられています。現在、研究者多くは、ビタミンD補給がCOVID-19によって引き起こされる合併症の症状緩和につながると考えています。
現在、複数の臨床試験では、COVID-19患者にビタミンDを最大200,000 IU投与することによる治療効果の確認が進められています。
研究は進行中である一方、ビタミンD単体によるCOVID-19の予防効果は見込めないと考えるのが妥当であるとされます。
ただし、ビタミンD不足による感染リスクの増大や、合併症の可能性について考えると、ビタミンDの摂取は重要であると言えます。
ビタミンの摂取推奨量は、一日あたり1,000〜4,000IU、体内基準値は30〜60 ng / mL(75〜150 nmol / L)であるとされます。ただしこうした推奨値は、個々人の血中濃度やその他要因によって左右されるため、医療機関にて、ご自身の血中ビタミンD濃度を検査することをお勧めします。
まとめ
研究段階ではあるが、ビタミンDサプリメントによるCOVID-19の症状緩和について、いくつか報告が挙げられている。ビタミンDには免疫系の改善を促し、COVID-19の治療に役立つ可能性が期待される。
結論
ビタミンDは免疫力向上や、呼吸器感染症の予防など、健康維持に重要な役割を果たしている。
また最新の研究では、ビタミンDの補給によるCOVID-19の重症化抑制の可能性についても指摘されている。
ただし現時点では、ビタミンDサプリメントの摂取とCOVID-19の発症リスクについて、関連性は認められない。
免疫系改善のためにビタミンDを摂取する場合は、事前に医療機関の相談を受けるようお願いします。