アメリカ人のほぼ60パーセントがコーヒーを飲んでおり、多くの人にとって毎日の習慣となっています。コーヒーについては、飲むとたちまちパワーとエネルギーを与えてくれ、悪習あるいは依存症以上のものがあると永らく考えられてきました。けれども、コーヒーの健康増進効果が明らかになるにつれ、悪習だとか依存症だとかという考え方は変わりつつあります。
これは、毎朝コーヒーを1杯飲むのが習慣となっている人たちにとっては、とてもいい知らせです。なぜなら、この習慣が、1日のスタートを切るのにとても健康的なやり方であることが明らかになったからです。
けれども、コーヒーは殺虫剤が最も大量に散布されている作物だということをお忘れなく。飲むときは、有機栽培で、公正に取引されたものであることを確認してください。(ただし、このようなコーヒーは全体の3パーセント足らずですが)
毎日のコーヒーが大腸がんの生存率を向上
進行性(ステージ3)の大腸がんの患者では、1日にカフェイン入りコーヒーを4杯以上飲むと、まったく飲まない患者に比べて、再発や死亡のリスクが52パーセント低減するという研究結果があります。
1日2~3杯のコーヒーを飲んだ場合でも、再発や死亡のリスクが31パーセン低減します。ト
研究者たちが強調しているのは、ソーダなどその他のカフェイン入り飲料では同じ効果は得られないということです。カフェイン抜きコーヒーと結腸がん再発のリスクとの関係は明らかではありません。
さらにまた、偶然による関連性も見られません。これは、コーヒーを飲む人は全般的に健康的なライフスタイルを守る傾向にあり、そのことがリスクの軽減につながっている可能性があることを意味しています。しかしながら、コーヒーに含まれる酸化防止成分やその他の有益な植物性化合物は、あらかじめ慢性病のリスクを低減することにつながっています。
実のところ、コーヒーは、2型糖尿病の発症リスクの低減にも関係があります。この病気は、結腸がんにかかるリスクを高めることで知られています。コーヒーに含まれる成分が、同じような理由でいくつかの慢性病のリスクを低減しているのかも知れません。
ニューヨークタイムズ報道
「研究者たちの仮説によれば、2型糖尿病の発症リスクを高める肥満、運動不足などのライフスタイルや、高インスリン血症などの要因も、結腸がんの発症を促進します」フックス博士はこう語っています。
「また多くの研究が示しているように、コーヒーの摂取は結腸がんの発症リスクを高める慢性病である2型糖尿病の発症リスク低減と関係があります。」
「私たちは、心臓病や糖尿病の一因となるエネルギー経路はまた、がん細胞の増殖にも関係があると考えています。」フックス博士はこう述べるとともに、さらなる研究が必要だと強調しています。
「この分析では、コーヒーと関連のあるリスクの低減はカフェインによるものだと結論付けています。一つの仮説は、カフェインが人体のインスリン感受性を高め、それがホルモンの必要性を減らすというものです。その代わり、糖尿病とがんのリスク要因となる炎症が減少します。」
その他にコーヒーとがんについて研究結果が示すものは?
多くの研究がコーヒーの摂取はがんの発症リスクを高めることを示していますが、複数の研究を分析して見ると、メタ分析でも同じですが、その関連性は消えてしまい、むしろがんに対して保護的であることが分かります。
たとえば、2007年に行われたメタ分析によれば、1日2杯コーヒーを飲む量を増やすと、肝臓がんの発症リスクが43パーセント低減します。この結果は、最近の研究でも確認されています。
言うまでもなく、コーヒーを飲むと、肝臓の健康や、肝臓病から肝硬変への進行遅延、C型肝炎への反応改善、肝硬変患者の死亡リスク低減にも効果があります
肝臓を健康に保つのにコーヒーが非常に効果的があるのは明白なので、研究者たちは、慢性肝臓病の人たちに毎日コーヒーを飲むことを薦めるべきだと表明しています。
59の研究が含まれるもう一つのメタ分析では、1日1杯コーヒーを飲む量を増やすと、がんの発症リスクが3パーセント低減することが明らかになっています。研究者たちによれば:
「コーヒーを飲むことで、膀胱、乳房、頬および咽頭、結腸直腸、子宮内膜、食道、肝細胞、白血病、膵臓、前立腺のがんの発症リスクが低減します。」
コーヒーを飲むと皮膚がんの発症リスクが低減することを示す研究もあります。カフェイン入りのコーヒーを毎日4杯飲むと、皮膚がんの中で最も危険な悪性黒色腫の発症リスクが低減します。
研究者たちによれば:
「コーヒーの成分は、紫外線B波が誘発する皮膚の発がんを抑制し、細胞のアポトーシスを誘発し、酸化ストレスとDNA損傷から保護し、表皮細胞の炎症を減らし、DNAメチル化の変化を阻害します。
1日3杯より多くコーヒーを飲む女性は、1月に1杯未満しか飲女性よりも、基底細胞がん(非メラノーマ皮膚がん)の発症率がかなり低くなっています。
焙煎コーヒーには1,000以上の成分が含まれ、がんとの戦いを助ける
コーヒーには、いくつかの潜在的な抗がんの要素があります。前述のようにカフェインはその一つで、がんによって、また処方されるときにもよりますが、腫瘍を刺激すると同時に抑制することが示されています。
コーヒーに含まれるリグナン植物エストロゲン、フラボノイドなどのポリフェノールやその他のポリフェノール類は、カフェイン酸と同様、抗がん属性を持つことで知られており、腫瘍の成長に関わるいくつかの要因を不活性化します。その中には、細胞周期調節、炎症とストレスへの応答、アポトーシスも含まれます。
研究者たちは雑誌BMC Cancerでこう述べています。
「コーヒーには二つのジテルペン、カフェストルとカワヴァルが含まれています。これらの成分は、抗発がん性と同等の生物学的な効果を生み出します。その中には、発がん物質の解毒に関与する第II相酵素の誘導、発がん物質の活性化に関与する第I相酵素の活性の特異的阻害、細胞内の刺激が含まれます。
コーヒーはまた、酸化防止効果に寄与するクロロゲン酸の主要な供給源です。クロロゲン酸を摂取すると、ラットのグルコース濃度が減少することが示されています。また、クロロゲン酸の分解生成物であるキニデスを摂取すると、インスリン感受性が高まります。
慢性高インスリン血症とインスリン抵抗性は、何らかのがんが存在する高い可能性を示すマーカーとみなされています。」
コーヒーのもたらす恩恵:心臓から脳まで
コーヒーが健康増進効果をもたらすことが十分確認されたことから、政府の諮問委員会は2015年版のアメリカ人の食事ガイドラインで、初めてカフェインを推奨することになりました。この報告書では、アメリカ人はコーヒーを毎日5杯(カフェイン約400ミリグラム)飲んでも、健康上の不利益を受けることはなく安全だと述べています。
カフェインの推奨は、複数のメタ分析や慢性病とコーヒーの関連を評価する研究に基づいています。その慢性病の中には、がん、2型糖尿病、心臓病、パーキンソン病、そしてアルツハイマー病が含まれます。次に、これらの研究が示している事例をいくつかあげてみましょう。
心臓の健康
25,000人を対象に行ったある研究では、普通の量のコーヒー(毎日3~5杯)を飲む人は、まったくコーヒーを飲まない人や5杯よりも多く飲む人に比べて、冠状動脈のカルシウム沈着が少なくなっています。
動脈プラークの大部分は、カルシウム沈着(アテローム性動脈硬化症)から成っており、それで「動脈硬化」と呼ばれるのです。冠状動脈のカルシウムは、将来的な心臓病の発症リスクを判断する材料として重要なものです。
それに加えてある研究では、適度にコーヒーを飲んでいると、心臓の鼓動に問題が起きて入院する確率が減少することが示されています。また別の研究では、小血管の血流を30パーセント増加させる可能性があることが判明しており、それによって心臓の負担が少なくなります。
さらに、11の研究と約48万人のデータを使ったメタ分析では、コーヒーを1日2杯から6杯飲むと、脳卒中の発症リスクが低減することが示されています。
多発性硬化症とパーキンソン病
コーヒーを毎日4~6杯飲むと、大量のコーヒーを5年から10年飲み続けるのと同じく、多発性硬化症の発症リスクが低減します。研究者たちによれば、「カフェインには神経保護特性があり、前炎症性サイトカインの産出を抑制します。」コーヒーとカフェインを大量に摂取すると、パーキンソン病の発症リスクが低減します。」
認知症
カフェインは、神経伝達物質のセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの産出を促進し、脳由来の神経栄養因子(BDNF)を放出させ、これによって脳幹細胞を活性化して新たなニューロンへと変換し、それによって脳の健康状態を改善します。
軽度の認知障害があり、コーヒーを飲むことでカフェインの血中濃度が高い人では、完全な認知症に進む可能性は少なくなります。「カフェイン入りコーヒーを飲むと、特に既に軽度の認知障害がある人にとっては、認知症の発症リスクが低減し、あるいは発症を遅らせます。」と研究者たちは述べています。
若年死
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに掲載された研究によれば、コーヒーの摂取は若年死と逆向きの関連があります。コーヒーをたくさん飲むほど、心臓病や呼吸器疾患、脳卒中、けが、事故、糖尿病、感染症などによる死亡リスクが低くなるのです。
アメリカではコーヒーが酸化防止成分の供給源ナンバー1
コーヒーがアメリカ人の健康にとても劇的な効果をもたらすもう一つの理由は、コーヒーがアメリカの食事では酸化防止成分の供給源ナンバー1だからです。アメリカ化学学会の第230回全国会議で発表された研究によれば、アメリカ人はコーヒーを飲むことにより、他のどの食事による供給源よりも多くの酸化防止成分を摂取している、とのことで、研究者たちは「これに匹敵するものはない」と述べています。
コーヒーの酸化防止成分には、かなりの分量のヒドロケイ皮酸とポリフェノールが含まれています。酸化防止成分は、活性酸素(ROS)やフリーラジカルからの攻撃に対し、細胞に適切な防御手段を与える自然のやり方なのです。
フリーラジカルは1種の高反応性代謝産物で、正常な代謝とエネルギー生産の結果として人体で自然に作られます。これは、煙草の煙や太陽光、化学物質、宇宙からの放射線と人工の放射線などの環境毒素に対する人体の自然な生物学的反応で、医薬品の重要な特徴でもあります。人の体は、運動しているときや体の中に炎症があるときにもフリーラジカルを生産します。
これらの重要な微量栄養素を摂取している限り、人体は、毎日汚染物質にさらされることによる老化に抵抗できます。フリーラジカルを抑える手助けをする酸化防止成分を十分摂取できないと、酸化ストレスにさらされることになり、細胞増殖と臓器損傷をもたらすことになります。
ベリーなどの果物や野菜は、酸化防止成分の理想的な供給源ではありますが、多くのアメリカ人は推奨されている分量を食べていません。ですから、毎日ベースで飲むコーヒーが、酸化防止成分の食事による摂取量の大部分を占めることになるのです。コーヒーを飲まない方でも、新鮮な農産物を食べれば酸化防止成分の摂取を簡単に増やすことができます。それに、コーヒーを飲む方であっても、様々な種類の供給源から酸化防止成分を摂取することは大事なことです。
カフェイン抜きコーヒーは健康にいい選択?
カフェイン抜きコーヒーに使われるコーヒー豆は、カフェインのほとんどを取り除く処理をします。カフェイン抜きコーヒーのラベルを貼るためには、元々のカフェイン含有量の97パーセントを取り除かなければなりません。これは、カフェイン感受性の高い人にとっては望ましいことですが(たとえばレギュラーコーヒー一杯で神経過敏になるなど)、考慮すべきことがいくつかあります。第1に、コーヒーの健康増進効果に関する研究の中には、カフェイン入りコーヒーの方がカフェイン抜きコーヒーよりも効果的であること示すものがあることです。
特に、カフェイン入りコーヒーが肝障害の発症リスク低減、代謝率の増進、うつ病と自殺思考の発症リスク低減、運動能力の向上をもたらすのに対し、カフェイン抜きコーヒーにはこのような効果はありません
最もよく使われる手法は、直接法です。これは、コーヒー豆からカフェインを取り除くために化学塩化メチルを使います。例えば、スターバックスはこの処理過程を多くのカフェイン抜きコーヒーをいれるのに使います。(「自然に近い方法で処理した」カフェイン抜きコーヒースマトラブレンドも提供していますが)
国立がん研究所は、塩化メチルを発がん物質の可能性があるとしてリストに載せていますので、このようなカフェイン抜きコーヒーは避けたほうがよいでしょう。(微量の塩化メチルがたまにカフェイン抜きコーヒーで検出されますが、普通は1ppmを下回る量です。)自然プロセスの脱カフェインは、酢酸エチル(植物ホルモン)か二酸化酸素をカフェインを取り除くのに使いますが、スイスウオータープロセスは水だけを使います。コーヒーでは二酸化炭素方式かスイスウオーター方式だけが有機的と認証されます。カフェイン抜きコーヒーを選ぶときは、これら二つの方式で脱カフェインしたコーヒーを選ぶようにしましょう。
もう一つの選択は、単にカフェイン含有量の少ないブレンドを求めているのであれば、アラビカ種の豆を選ぶことです。アラビカ種の豆は元々、ロブスタ種の豆の半分しかカフェイン成分が含まれていないのですから。また、カフェイン抜きコーヒーであっても、カフェインゼロではないということを忘れないでください。(普通のカフェイン抜きコーヒー1杯には3~18ミリグラムのカフェインが含まれており、レギュラーコーヒー1杯には140~300ミリグラムのカフェインが含まれています。)
次に、妊娠中の女性が知っておかなければならない重要なことです。公衆衛生当局は、妊娠中の女性は1日のカフェイン摂取量を200ミリグラム(又はコーヒーを1日2杯)に制限することを提案しています。しかしながら、カフェインは成長中の胎児に重大な影響を与える可能性があります。
カフェインは胎盤を自由に通り抜けることができ、またカフェインは赤ん坊に何ら健康増進効果をもたらすこともなく、ただ害悪をもたらす可能性があるだけであり、私は声を大にして、妊娠中の女性はいかなる形のカフェインであれ避けるべきことをお薦めします。
コーヒーをだめにする飲み方
健康増進のためコーヒーを飲みたいのならば、コーヒーをブラックで飲むことです、砂糖も、非乳製品のクリーマーもクリームも、香料も入れないで。コーヒーにクリーマーや非乳製品クリーマー、砂糖、その他の甘味料、香料などを入れると、治療効果が失われ、健康を損なう恐れがあります。
ポリフェノール酸化防止成分の自然状態での混合物質は、コーヒーを実に健康的なものにさせます。しかしながら、コーヒーに乳製品を加えると、健康増進効果のあるクロロゲン酸類の体内への吸収を妨げることを示す研究もあります。一方、コーヒーに砂糖を加えるとインスリン濃度が上がり、インスリン抵抗性を引き起こします。
また、コーヒー豆は最も大量に殺虫剤が散布されている作物の一つです。ですから、有機栽培と認定されたコーヒー豆以外選んではいけません。忘れてならないのは、殺虫剤やその他の化学物質を振り撒かれたコーヒーを飲んでしまうと、どんな健康増進効果も帳消しになってしまうということです。可能であれば常に、今現在も続いている熱帯雨林とそこに生息する鳥たちの滅亡を防ぐ一助となるように、持続可能な「木陰栽培」コーヒーを購入しましょう。
木陰栽培のコーヒーは良い味がするという人はたくさんいます。それに、皆さんは古くなったコーヒーではなく、香りと味が新鮮なコーヒー豆の粒を買いたいと思うでしょう。コーヒーに心地よい香りがしなければ、おそらく腐っています。腐敗を防ぐためには自分でコーヒー粉を挽くことです。あらかじめ粉にひかれたコーヒーは、家に持って帰るまでに腐臭を発するかも知れないのですから。ドリップコーヒーメーカーを使うときは、必ず非漂白フィルター使うようにしましょう。明るい白色のフィルターは塩素漂白されており、コーヒーをいれるときこの塩素がいくらかフィルターから浸出します。漂白されたフィルターは、ダイオキシンなど、消毒の際に出る危険な副産物で満ちていることでも悪名が高いのです。
最後になりますが、ほどほどのコーヒーは健康増進効果があるものの、飲み過ぎないように気をつけましょう。1日に10杯以上コーヒーを飲むと、かえって悪い影響が出るとの研究結果もあるのですから。カップ1杯のコーヒーというとき、多くの研究はそれをカフェイン約100ミリグラムを含む5~8オンス(約150~240ミリリットル)と考えていますが、多くのコーヒー店では、小カップが12オンス(約360ミリリットル)で始まり、大カップは20~24オンス(約400~480ミリリットル)になります。実際に自分がどのくらい飲んでいるのか、はっきり知っておきましょう。